夜明け前

その時その時で

wwooferになってみたの巻

先月はWWOOFというサービス(ご飯、泊まる場所と“力”を交換する仕組み)を利用して、木更津にある山野さんちにお世話になっていました。山野さんちはみんなで協力してお米や自家焙煎コーヒーの田んぼカフェ(いつかopen予定)を作っています。

WWOOFはworld Wide Opportunities on Organic Farms『世界に広がる有機農場での機会』の頭文字。有機農場を核とするホストとそこで手伝いたい、学びたいと思っている人とを繋いでいます。※wwooferはホストに力を提供する側の人のことです。

以下にそこでの生活や作業、出会った人々、思ったことについて書いてみました。

WWOOFに登録した時点の私は農業にさほど興味はありませんでした。
登録した目的は2つ。

1つ目“田んぼカフェ”が竹や土などの身近な素材で作られていることに感動したから。自分もそんなお家をみんなで作りたいので学ばせてもらおうと思った次第。

2つ目wwoofは自分を生きやすくしていくと思ったから。具体的には馴染みのない地域で人と暮らし、関わる経験やみんなで一つのものを作り上げていく経験を積むと好きな人や地域を増やせるし、そういう経験ができたことは自信に繋がって自分のことも好きになれる→自分を好きになっていけると生きやすい。っていう思想から。


山野さんちの家族は、パパ、てるさん、ママ、かつらさん、長男 かつもりくん(10才)、長女ふわ(7才)ちゃん。

私が来たときには香港から来ている同い年のれいちゃんメイビスがいて、翌日にメイビスが旅立ち、十日目にドイツからベル&ジェニーが来て。
私は十日間 山野さんちの家族&れいちゃんと一緒にいました。


山野さんちのお米づくりは無農薬 無肥料。(お米専業農家さんから米作りに必要な田んぼや道具を借りたりノウハウを教わったりしている )
コーヒーはてるさんが納得したフェアトレードのオーガニック豆を一種類だけ仕入れてて、その日に飲む分だけをその日に焙煎しています。
カップ一杯のコーヒーにもお茶碗一膳のお米にもたくさん手間をかけていて、いただいていたご飯やコーヒーはとっても美味しかったです。

毎日のごはんは みんなが作ったお米と、桂さんの手作りのお料理をみんなで揃って食べます。今まで食べたことないもの、考えもしなかった料理がいろいろでてきて毎食が楽しみだったし、ほぼ毎食揃って食べるのも小さい時以来でとても豊かでした。


鍋を開ける前の胸の高まり



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いただきます前の胸の高まり


家族の紹介をすると
パパ、てるさんは天ぷらに使った廃油で車を走らせたり(通称 天ぷらカー)地域のイベントでコーヒーを出したりしています。仕事に対しては厳しいこともありますが聞くとなんでも教えてくれます。
ママ、かつらさんは美味しいごはんを作ってくれて、子どもたちやパパやwwooferのサポートをしたり 一緒に農作業をしたりします。

かつもりくんは野球に夢中。ジャイアンツと千葉ロッテを応援してます。
夜はビールを注いでもらいました。俺が注いであげる!上手く注ぐから。と。
慎重に綺麗に注いでくれました。
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※この後、ふわちゃんと二人で尻文字クイズを始めてどっちが酔っぱらっているのかわからないくらい愉快でした。
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チャーハンも作ってくれた!

ふわちゃんは物語を読んだり絵を描いたりするのが好き。
人のもの真似も好きで時々ごはん食べてるときに真似されました。人をよく観察しています。(山野さんちではウーファーゲームというのが時々勃発するらしく、 誰かがウーファーの特徴を真似して みんなで思い出して言い当てて懐かしむWWOOFホストならではのゲーム。笑)
ムーミンが好きで、絵本と紙とペンを渡しされて描いて~と頼まれ、描くと喜んでくれました。

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毎日が全力。

二人は仲良くトレーニングしたり時々けんかもしたり。
誰にでもフレンドリーでいつもの自分たちの生活のペースを保ちつつ 一緒に楽しもうとしてくれていました。
少し無理することもあるんじゃないかなと思うけど、ちゃんと甘えてる時間もありました。
わんわん泣いたり けらけら笑ったり歌ったり のびのびしているように見えました。

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小さい頃から知らない国の人が入れ替わりやってきて一緒に暮らすと言うのが当たり前になっているというのはすごいことだな~と思います。
家に居ながらにしていろんな国の人から学べるってすごい。


Wwooferは毎日作業時間が決まっています。働く時間はだいたい六時間。ごはんはほぼ三食みんなと食べるので規則正しい生活をしていました。
長らく学校生活を行っていなくてサラリーマンになったこともありません。なので規則正しい生活に自分を合わせるのは少しストレスがありました。

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朝六時半起きがきついんですが、部屋の窓を開けて 空気を吸って 眺めて 癒されてました。

適応すれば 規則正しいのはいいと思います。
時間を制限することは 密度を濃くするなー、と。

初日に手拭いを一枚もらいました。wwooferみんなに好きなものを選ばせてあげているらしいです。
手拭いはお弁当包みにもなるし首にも巻けるしマスクにもなるし頭にも巻けるし 乾くのも早い。とても重宝しますね。


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作業後に黄昏るもえこ 田んぼにて
撮影:れいちゃん

1日目2日目はお米専業農家の進藤さんちでの作業でした。大きな機械がたくさんありました。御家族みんなが協力して働いていました。休憩時間には、お茶請けに入らないくらいのお菓子などを出して 『どんどん食べなさい!』と進めていただきました。お昼にはみんなでテーブル囲んで、ご家族の日々の楽しみ『マッサン』を見ながらおにぎりを食べたり。
遠慮気味に食べるれいちゃんは、毎週進藤さんちでご馳走になっていたら少し太ったそう。そこへ進藤さんのお母さん『これは0カロリーだから大丈夫よ!』とおにぎりを差し出していました。傍らで進藤さんちの娘さんは拾ってきた犬を懸命にお世話していました。
息子さんは藁をかく作業の合間に焼き芋をさせてくれました。
静かな田んぼの真ん中で藁からお芋を取り出して、ちびちび皮を剥きながらみんなで食べる時間、贅沢だなぁと思いました。
優しくて愉快な進藤さんちのみなさんでした。


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優しくコンバインの操縦を教えてくれる進藤さん。
楽しみは時々行く旅行。


3日目の夜、てるさんから言われました。『wwooferは自らがその家庭、地域に適応して関わりをお互いにとってより楽しいものにしようという想いで行動することによって 世界中に楽しくいられる居場所が増えていく。これは素晴らしいこと。今日までのもえちゃんを見ているとそれができていると感じたよ。』というようなこと。

きっとwwoof期間中に限ったことではなく。誰とどこにいても(一人でいても)その場その場で自分と、人とちゃんと全力で向き合っていれば どこにいても楽しくいられると思いました。
その“全力”は 時に気を抜いてリラックスすることかもしれないし、怒ることかもしれない。思いきり楽しく歌うことかもしれないし何にも考えないことかもしれない。
“楽しく”は楽しさだけではなくて いろんな気持ちも含む。そういうのを堂々と感じられること、認められることがどこもかしこもが自分の居場所(いてもいいと感じられる場所)になるってことやと思います。


農作業は、今までの自分や周りの環境の成り立ちを知れます。だから面白い。
知ったあとのフィルターを通してみた自分の生きる環境は 前より愛おしい。過去に決めた概念も 再構築される。
人との関わりでもそういうことが増えました。
農作業を年間通してやることができたらどうなるかな。


作業でやったこと

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お米農家.進藤さんちの大きな田んぼの稲刈りでコンバインの操縦を教わって刈らせてもらったり

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稲刈り後に台風で飛ばされ局所的に溜まった藁を集めたり

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手刈りで収穫して束ねて干したり*1

お米の袋詰めをしたり、山から竹を取ってきたり


http://instagram.com/p/uc3zpttcSj/

お店のポップに使う絵を描いたり

竹を切って田んぼカフェの内壁に張ったり

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れいちゃん。
耳にかけた鉛筆が完全に様になっている
撮影:もえこ


藁集めや竹取りは体力的にきつくて毎日新しい筋肉が痛くなりました。


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15メートル級の竹*2を一人で切り出してこれるようになりました。



作業をしている時、突然に昔味わった気持ちや光景がパッと浮かぶことが度々ありました。しばらく忘れていたことばかり。瞑想したときのような体験でした。れいちゃんも、農作業は瞑想ができると言っていました。

れいちゃんとは長い時間一緒にいたし、たくさん助けてもらったり、たくさん話をしました。

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日本のドラマが好き。黒澤映画や日本の古い映画にも詳しい

もえちゃんは自分のどこが日本人らしいと思う?と聞かれました。日本人らしさってなんだろうと考えました。働き者、謙虚さ、協調性、意見をはっきり言わないところ?みんなと同じが良し?和の心?
ここにあげた要素は自分にはあまりピンと来ませんでした。
儚さ(移り変わってゆくもの)を感じるのが好きだと思うところは日本人らしいかなと答えたら何故儚さが好きなのかと聞かれました。
今目の前にいる人、光景 一瞬一瞬がもう二度とない時だと思うことでその一瞬をより貴重に思うことができる。例えば桜を見て、来年は見れないかもしれないと思うとより愛しさや今見れていることへのありがたさを感じることができる。
だから好きなのかな。みたいなことを考えながら つっかえながら話しました。
改めて考えるきっかけをくれてありがたい。私もそういう質問をして関わる人から引き出したいし、引き出されたいです。

香港人はせっかち、せかせかしていると言っていました。れいちゃん自身も日本人に比べてそういうところはあるけど日本にきてから変わったそう。(私はれいちゃんに対して いつも落ち着いててずっしり構えている印象を持ってます。)

興味あるものは違うけど 少し興味あるものは相手が興味あるもので、人に影響を受けやすいところは似ている気がします。

れいちゃんに 農業(自然農)をやっていきたい理由について聞いてみました。
自然のエネルギーの循環(その中には食べ物を食べる自分も含む)を感じていたいからと言っていました。
私も感じてみたいなーとその時強く思いました。だから、家を建てたらその目の前に小さく野菜を育てるスペースを持とうと思っています。農はきっと 人が生きるうえで大切なことを感じさせてくれるものなんじゃないかなという予感がしてます。
興味がなかったことでも、それを面白そうにしている人に会えると興味がでます。
そういう人に出会えるのはラッキー。


落ち着いてるように見えるれいちゃんだったけど、香港では友人たちが学生運動をしていて、れいちゃんも参加したいと 内心では無力感を感じたり揺れてるようでした。

話が一段落付くと、少しの間が空き それぞれ興味あることに戻っていきました。(私はテーブルに広げた建築の雑誌に、れいちゃんは農業の本に。)

自休自足 季刊 2005年 春 Vol.09

自休自足 季刊 2005年 春 Vol.09

確かこれかな?ストローベイル建築について載ってました。


かつらさんはたくさん話を聞いてくれたし、子どもを産んだときの体験などを話してもくれました。一日三時間の散歩を私もしてみたいな、機会に恵まれたら産みたいなと思いました。

てるさんは命の循環のよい生活をしようとしています。廃材を使おうとしたり 電気を太陽光で一部自給したり、天ぷらカーもそうです。

てるさんから聞いてすごいなぁと思ったエピソードを2つ

1.てるさんちの近隣の農家さんは無農薬な農家さんではありません。
4年前に木更津で田んぼを初めてから毎年一度 上空から農薬の一斉散布がある日は家族たちとwwooferを車にのせて出掛けていたそうです。
今年の一斉散布の時に、山野さんちの近辺は撒かないことになったから、と近隣の農家さんが少し嬉しそうにてるさんに話したそうです。
自分の主義や主張を押し付けないで地元の人々と調和してこの地でやっていこうって気持ち すごいなぁって思いました。
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2.地元の人々の間では、要らないものは山野さんちに声かければ何か使ってくれるだろう となっていて、いろんな人がものをくれたり山野さんがほしいと言ったものを持ってきてくれる人がいたりするんです。(要らなかったら断る勇気もいる byてるさん)

てるさんは『今自分にとって必要ないものは、それを今欲しい人がいたらどんどんあげる。自分が何か必用な時には 誰かがくれたり違う形で帰ってきたりする 』みたいなことを話していました。こういう人間関係も きっと毎日の些細な関わりの積み重ねなんだなぁ。すごいなぁ。

一般的でないことをするのは 色々考えることが必要で 時に大変なこともあると思うけど ほんとうに自分が信じた道のやりたいことをやっている時はきっと楽しくて、そういう仲間と繋がるのも楽しいんだろうな。
そんで、そうして作っていったものの背景にはたくさんの人がいて、想いが詰まってる。そういうものに囲まれているのは、気持ちがいいものだろうなぁ。


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イベントでコーヒーをいれるてるさん
ポップを描かせてもらいました。


いつかの夜
てるさんがお知り合いから紹介されたという20分ほどの動画をみんなに見せてくれました。
植松努というかたが“思うは招く”というテーマで話しています。

Hoping invites | Tsutomu Uematsu | TEDxSapporo ...

感嘆の声をもらしながら見ました。
勇気付けられました。是非みてください。



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自分の家の他に 会いに行けるところと
顔をみたくなる人が増えるのは 豊かだな。
応援したい人も会いたい人も増えました。


10日目の夜 みんなで“切手のない贈り物”を歌ってくれました。
ピアノ弾いてなかったら泣いてたでしょう。


11日目の朝はてるさんの仕事とwwoofer達の観光を兼ねて東京へ行くことに。
早起きしてかつらさんが炊いてくれたご飯でおにぎりを作りました。
ベル&ジェニーに握りかたを教えたのですが
もっと楽しくできるように教えたかったです。
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レイチェル・ダッドのおにぎりの歌

Rice Triangle

Rice Triangle

  • Rachael Dadd
  • Singer/Songwriter
  • ¥150
がサイコーにぴったりだったので
暗記しておきたかった、と悔しい思いをしました。


移動はてるさんの天ぷらカーに乗って。
今、誰かの家庭の天ぷら油で私たちは移動しているんだな~って 不思議な気持ちになりました。
車の中で 荒井由美の“やさしさに包まれたなら”を一緒に歌ったりしました。

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帰り際に『ご両親にいれてあげてね』とプレゼントしていたいたコーヒー豆。
なんて嬉しいんでしょう。
心を込めてカップにおとしました。格別に美味しかったです。


作業中にふと『おばあちゃんの顔見なきゃ!お墓参りに行かなきゃ』って気持ちになったので帰ってから行ってきました。
ありがとうございました。って言いたくなったんだと思います。おばあちゃんが嬉しそうにしてくれて来て良かったです。

夢中になれるものに動こう、もっと考えたり人に会ったり移動したり 動こう。っと。

*1:この日はれいちゃんにNHKworldの取材が来ていました。海外に向けて放送されるようですよ

*2:竹の生えかたを見て倒れそうな方向を予測して切り込む場所を考える。傾いてる方向に先に刃を入れておく。傾いた方の竹は締まって刃が抜けなくなるからそしたら逆方向を切っていくとスムーズ。切った後の取り回しが楽なように竹の切り口を持って倒したい方向をコントロールできるようになると良し